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アジア19カ国から建築家が参加するARCASIA(アジア建築家評議会)の2016年9月の香港大会で、 House with Gaia layers(丈六の家)が、住宅部門でARCASIA賞を受賞する知らせを受けた。香港大会のテーマは、多様性と成長—The Green Age of Asiaである。

受賞作は、14年前に当時築25年の和風住宅をリフォームした再生住宅である。バブル崩壊後、建築を建てては壊すスクラップ・アンド・ビルドへの疑問、ゴミで一番大きな割合を占める建築廃材問題や、シックハウス病が社会課題に出た頃であった。



この住宅は完成後から、建築主の日々の感動や喜びに支えられ、緑が息づき、時とともに住空間の魅力が増していると感じていた。10年を過ぎて、賞に応募させていただく。

2012年、環境技術が目覚ましく進展する中で、JIA(日本建築家協会)から環境建築賞を受賞する。2014年には中国民族建築学会からは奨励賞を受ける。そして今回、地球環境時代に様々な建築的挑戦が始まっているアジアで、ARCASIA賞受賞の知らせを受ける。時間や国を超えて評価していただいた悦びとともに、この建築を支えていただいた関係者の方々に感謝したい。

同時に、9月29日の受賞日まで詳細はわからないが、14年経て審査員を惹きつけたことは何か考えてみる。これからの住空間のあり方を考える機会にもなる。



写真は15年目の5月のある日に訪ねたスナップ写真で、夕日が差し込んだ広間空間の一時である。四季や天気、朝から夕刻まで光の角度や強さ、色が変化する太陽の動きと、四季折々の様々な緑の表情を通して、この室内に光の空間が生み出される。身体は自然の刻々と変化する時間を感じる。午後室内が金色の光と影に染まる時も経験する。

建築主は、雨の日、台風の時も雪の日も、朝も夕方も、室内と外部の庭の樹木、空や田園空間と一体となった景色はとても魅力的であると言われ、家族や人と過ごす時間も豊かになり、床磨きがきっかけで今や毎年世界のフルマラソンに参加するようになり、活動的なライフスタイルをもたれている。

夏はほとんどエアコンを使わず、窓をあちこち開けると心地良い風がめぐり、冬は朝、晩はストーブをつけるが、日中はほとんど暖房しなくて済んでいる。

 



かつての伝統的空間は、縁側や深い庇や軒と言った内部と外部の間に、緩衝空間とか中間領域といったゾーンがあった。暑さや寒さ、風雨を和らげたり、外の自然と内部との間をつなぎ、そこが心地良い場所になったり、人と人あるいは人と自然をつなぐ場所になった。

具体的な空間的仕掛けは別として、どの文明圏においても、こうした気候・風土の中から育んだ知恵や生活文化を生む空間があった。

現代は安易な経済性や効率性に陥りがちで、そうした自然の恵みを生かさずに、エアコンや機械電気機器や設備類に頼り、壁と窓だけの外か内という単純な境界だけになってしまっている。



Gaia layersというタイトルの丈六の家は、心身の再生を意味する寝室を核に旧住宅を入れ子状にして、外側に伝統的木組みで包むようにする。紫外線を抑制し、断熱するLow-E複層ガラスの開口部と嵌め殺し窓で表皮を作り、さらに自然の中で生かされていると感じる等身大の緑の植栽で囲む。

寝室から居間、外部の庭や様々な木々、さらに地域の田畑、山々の風景までつながる、何層かの空間的仕掛けで包むコンセプトを、Gaia layersと名付けた。

 



室内空間から自然と対話ができる感性を育むことを意図する。生活排水を浄化した水が地面を潤し、空や木立を映し込む。蝶や鳥もやってくる。緑は愛着もって維持され、樹木群から刻々と変化する自然の美と心地良い微気候を生み、室内に快適空間をつくっている。

室内の自然乾燥の地場杉材は、癒しをもたらす木の成分が発散され、色、つや等、経年変化の美をつくる。再生して14年、改築時より一層住空間の魅力が増している。



小さな住宅でも地域の自然と循環を意識した生命の生存圏の中の住環境として捉える考え方を大切にする。単なる視覚的な美しさや快適さからではない、人間と自然の豊かな関係性をつくる建築のあり方、姿勢が評価されたと推測する。

建築は時間を経て古くなるというより、新築時より時間と自然の変化ともに空間がより魅力的になるという住空間の成長が注目されたのではないだろうか。

新居建築研究所

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